リレーエッセイ Vol.6



これからの就職活動

経済学部1983年卒 後藤 隆司




経和会で就職支援を担当している後藤です。
これから就職し社会人になる後輩の皆さんに、今後自分たちの生き方を真剣に考える上で、少しでもプラスになるようにご支援したいと思い、僭越ながら私が体験したことや伝えたいことをお話しさせていただきます。
人がどういう生き方をするか、進学・就職・結婚は、その人の生き方に大きく影響を与えるライフイベントです。皆さんは、いよいよこれから就職というライフイベントを迎えるわけです。

【学生時代】
将来的に海外で仕事をしたいと漠然と思っていましたので、入学して真っ先に英会話研究会ESSに入部しました。海外で仕事をするには語学力が必要と思っていましたが、入部して習得したことは、語学力では全くなく、麻雀と部員たちとの友好でした。授業もそっちのけで、毎日ESSの部室に入り浸るという生活で、一年生二年生の時には、選択していた授業の先生の顔を、期末試験の時に初めて見るという部活中心の学生生活でした。

そのせいか、二年生の時にESSの会長に担ぎ上げられて、ますます授業から遠ざかっていきました。授業には出ない、先生の顔も定かでない学生生活でしたが、経済学部以外の教養学部・教育学部・工学部などから入部してきた部員たちとの交流や、ESSの会長になったおかげで、部活を通じた関東の国立大学など、他校の人たちとの交流で培ったものは、学生時代の大きな財産になったと思っています。学生の本分である勉学については、微分・積分などの数学が好きだったので、近代経済学のゼミを選びました。社会人となって、財政・金融などのマクロ経済学や厚生経済学は、非常に役立ちました。

【昔の就活】
三年生の終わりの頃に、突然私立大学に行っていた高校時代の友人から、就活について電話がありました。まだ全然就活のことを考えていませんでしたが、私大では既に動き出しているとのことでしたので、慌てて就活を開始しました。そこで初めて悩んだのは、どこの会社に就職するかということでした。自分なりに就活関連の書籍を読み漁り、いろいろな業種や会社の状況をチェック・分析比較しました。学部の先輩方にも相談し、数々の有意義なご意見をいただき、最終的に自分で決めたのは、大手のITサービス提供会社でした。十数社の会社の状況を綿密に分析しましたが、最後は何となく自分の勘で、この会社が良いなぁと決めました。そう直感した理由は、海外で仕事ができるチャンスがあり、社会貢献度が高いと言うことです。当時から海外主要国に拠点を設けて、海外企業とのグローバルな競争をしていましたし、ITサービスは人間の生活の奥底まで浸透し、生産性や効率性を上げられるものだと思っています。

当時はまだ採用する側の会社よりも就活学生の方が優位な時代で、事実、周りの同級生たちは就職に関してノンビリした雰囲気でした。経済学部なら、どこかの金融機関には入社できるだろうと、受け身の人が多く、明確に自分が行きたい会社を決めている人は少なかったと思います。自分としては、先ずリクルートスーツを新調し、希望する会社に経済学部の先輩が入社しているかを調べて、その先輩に会いに行きました。とても親身になってくれる先輩で、お会いした際に会社の状況や面接での注意事項など、とても参考になることを教えていただきました。その後、人事部の方々と数回の面接を経て、10月1日に内定が出て、運良く希望する会社に入社することができ、初心を貫くことができました。

【社会人生活】
入社後は、配属面接の時に海外に関連する仕事をしたいと希望し、これまた運良くその会社の海外事業本部に配属されました。その後、退任するまで海外ビジネス部門に属し、その会社の海外ビジネスの発展に貢献することができたと自負しています。在職中は、北米の営業部門・海外拠点の管理部門・アジア拠点の駐在など、一つの会社組織の中で様々な仕事を経験できました。特にアジア拠点駐在中は、副社長兼CFO (Chief Financial Officer) として、年間売上1,000億円規模の海外拠点の経営を切り盛りした経験は、辛くほろ苦くも、私にとっては最もやりがいのあった時期です。

様々な経験の中で、もちろん失敗したことも、ここでは書き切れないくらい数多くありました。未知の新しいことに取り組むと、誰でも失敗することはあります。でもその失敗が、とても有り難いことだと学びました。誰かが失敗したときに、周りの人たちはその失敗した人が、どうやって失敗をリカバリーするのかに重きを置いています。失敗をしっかりと認識し、リカバリーするために行動することは、仕事の幅を広げることにつながります。また、他の失敗した人の気持ちにも共感することもできます。シマッタと思ったら、シメタと思え。

【今後の就活】
これからの就職戦線は、世間で言われている以上に厳しいものになることが予測されます。2019年10月に消費増税が実施されたことによる消費や景気の低迷、その上に2020年明けからのコロナ禍による全世界的な健康被害と経済低迷、更に東京オリンピック開催延期による日本国内の投資や消費の低迷など、これからは深刻な政治経済の迷走が全世界的に蔓延し、しかも数年は続くと予測されます。経済におけるデフレギャップを縮小改善すべく日本政府が適正な規模の財政出動をしなければ、コロナ禍以外に消費増税やオリンピック延期・規模縮小の影響を受ける日本の政治経済の迷走は、世界の中で最も深刻なものになると思われます。

このような状況下、会社組織は存続するために、短絡的に経費やコストを削減することを第一に考えます。正規社員のリストラや派遣社員の契約解除だけでなく、人件費や福利厚生費・交通費・オフィスレンタル費などを如何に削減するかに注力します。事実、コロナ禍でテレワークや自宅勤務が流行していますが、これにより一般企業は残業手当・交通費・オフィスレンタル費などを大幅に削減させています。

最新の経済指標の分析では、2020年度のGDP伸び率はマイナスに落込み、失業率は昨年9月の2.5%のほぼ完全雇用状態から5%程度まで悪化し、今後新たに120万人の失業者が発生すると予測されていますので、一般企業は新規採用を厳しく絞ると考えられます。いままでは100%の学生が就職できましたが、今後は70%の学生しか就職できなくなると危惧されます。三人に一人が就職できない世界が迫っているということです。その上、日本の一般企業は新卒採用主義が強いので、卒業する年に就職できないと正社員として就職できる可能性が著しく低下します。

どこの会社に就職するか。会社に就職する場合、自分の人生設計を考慮すると、その会社が入社後に最低70年間は存続できる会社でないと、生活基盤が安定しないことになります。公務員は税金が給料の原資なので、景気に関係なく一定化しており、存続性も高いです。一般企業の人は売上が給料の原資なので、景気に影響を受けて、業績次第で給料は高くなる可能性がありますが、存続性は低いです。自分が独立して起業する人は、給料は不安定で存続性は低いですが、仕事のやりがいは大きいです。将来起業するに必要なノウハウや人脈を得るために、一時的に関連する会社に就職するという考えもあります。

一つの会社でのキャリアアップを目指すか。会社の存続性が不安定化している状況なので、これからは一生涯一つの会社に属して働くこと、つまり終身雇用を、会社は保証できなくなります。また、日本の岩盤規制に守られている会社も、世界のグローバル化の進展により、熾烈な競争に晒される危険性もあります。つまり、会社の存続性も怪しいので、到底一つの会社での継続したキャリアアップは望めないものになります。

日本の会社だけか。海外で仕事をする選択も有ると思います。日本と異なった文化を背負った人たちと一緒に仕事をすることも可能性の一つです。その際に大切なものは、私の海外駐在経験からすると、語学力では全く無く、それは日本人としての道徳観でした。日本人としての道徳観は、現地の人たちと信頼関係を構築する上で、とても大切なものであると身をもって感じました。駐在員はその会社の代表として派遣されますので、現地の人たちの模範となることが不可欠で、現地の人たちに敬意を払い、とことん尽くすというDedicationは、日本人としての道徳観から生まれてくると思います。 (Dedicationについては、下記をご参照)
hrefhttp://takedanet.com/archives/1013798072.html

【最後に】
どこの会社に入社したとしても、今後の社会の変化を鑑みるに、リカバリーのチャンスはいくらでもあります。入社した会社が自分の目指すキャリアと違っていたら、会社を替えれば良いだけです。
ただ、皆さんには、内定をもらったからと言う理由で、その会社に入社するのではなく、自分が良いなぁと思う会社を選んで入社するという姿勢で、就活に臨んでいただきたいです。 どのような職業にも貴賎の差はありませんが、自分の才能を発揮できる職業に就かない又は就けないことも、非常にもったいないことです。埼玉大学をご卒業する皆さんは、ご自身が持っている才能に気が付いていないだけで、誰もみんなそれぞれ素晴らしい才能を持っています。
皆さんが良いなぁと思う会社で、皆さんだけが持っている才能を発揮してください。

学生より社会人の方が、断然面白いので、皆さんが社会人になられることを楽しみにしています。

以 上

オススメの本
・「人を動かす」&「道は開ける」:デール・カーネギーの著書
1937年に発行された名著。これから社会に出て、いろいろな課題に直面した時に役立つと思います。
・「道徳のメカニズム」:鄭 雄一の著書
益々国際化する社会において、いろいろな文化の人たちと如何に上手くやっていくか、ヒントになります。

オススメのYouTube
・虎ノ門ニュース
・文化人放送局
 大手の新聞や地上波TVでは報道されないニュースや角度を変えた論評を動画で見られます。

オススメの映画
・グッドウィルハンティング (脚本:マット・デイモン、ベン・アフレック)
 これから就職しようとする人にヒントとなるアメリカ映画。
・生きる (監督:黒澤明)
 今後の自分の生き方を真剣に考える上でヒントとなる日本映画。

オススメの健康法
・まごはやさしい
 健康を維持するためには、栄養を如何に取ること、つまり食べることが肝要です。病気になった時も、意外と薬に頼ることよりも、十分な睡眠をとり、栄養のあるものをガンガン食べる方が効果的です。キーワードは、孫は優しい(まごはやさしい)です。これらを普段からまんべんなく食べると良いです。

:豆類(大豆、豆腐、納豆など)
:胡麻
は(わ):わかめ、海藻類
:野菜
:魚(特にサンマ、アジ、サバなどの青魚)
:しいたけ、キノコ類
:いも類


<台湾駐在当時のチームメンバー>


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