経済学部を卒業してから丁度10年が経ちました。当時は、東日本大震災の影響で卒業式が中止となり、社会人になる実感があまり湧かなかったことを覚えています。縁あって経和会の活動に関わらせていただき、今は広報委員としてこのホームページの運営に携わっています。
エッセイで何を書こうか…と色々と悩み、諸先輩方と比べるとまだまだ社会人経験も短く学生の皆さんにお伝えできるようなことも少ないので、社会人10年という節目に自分自身の経験を振り返ってみました。為になるような話はありませんが、ご笑覧いただければ幸いです。
(幼少期~)
私は昭和63年に静岡で生まれました。自衛官だった父の仕事の都合で小学生の頃に転校を繰り返した影響もあって、かなり内向的で人と話すのが苦手な子どもでした。(最近知りましたが、場面緘黙症に近い状態だったのかもしれません。)そんな性格を鍛え直すためだったのかもしれませんが、父には幼いころから自衛官になるようにと育てられました。父が単身赴任先から帰ってくる週末には10km前後のランニングに連れていかれ、お陰で昔から体力だけは少し自信がありました。そうして、中学3年の時には陸上自衛隊の少年工科学校(現・高等工科学校)の採用試験を受験しましたが、結果は不合格。高校入学後の翌年に再度挑戦するも結果は変わらず、また、筆記試験ではなく面接での不合格だったので、自分の人格が否定されたように感じ当時はかなりショックを受けました。一方でこの挫折がきっかけとなり、自分自身の将来をどう考えるのか、その上で自分の内向的な性格とどう向き合っていくのか、初めてきちんと意識するようになったように思います。
(学生時代)
こうしたこともあり、大学は実家から離れてしがらみのない場所にと考え、また、やりたいことは明確にはありませんでしたが、父や祖父の背中を見て漠然と公務員の仕事に興味が沸き、社会環境設計学科に入学しました。大学時代はそれほど熱心に勉強したかと問われると自信がありませんが、やりたいことが明確に定まっていなかった分、興味関心の赴くままに専攻関係なく色々な講義を履修したり、シラバスで面白そうな大講義室の授業を探して後ろの席に潜り込んで受講してみたりと、知的好奇心を満たすという意味では充実していたように思います。ゼミは政策フォーラムに参加して自治体への政策提言を行うゼミに所属していました。提言に向けた課題設定や政策効果を説明するストーリーやロジック、提案の見せ方など、ゼミの仲間と発表直前まで寝る間を惜しんで真剣に議論した経験は本当に貴重なものでした。
また、大学では内向的な性格のコンプレックスを克服したいという思いが強かったため、『悩むより行動』することを極力意識し、興味を持ったサークルに飛び込んでみたり、NPOのインターンシップに参加したり、都内の英会話スクールに通って他大学の学生と交流したりと、活動的に過ごすよう心掛けていました。大学内外で様々な人と出会い、多様な考え方や価値観に触れるにつれ、自分がいかに狭い「井の中」から世界を見、考えていたのかを実感することができました。そうして気付けば自分の性格に対するコンプレックスも薄れていました。
(現在)
就活では国家公務員から地方公務員まで公務員系の採用試験全般を受験し、結果として、最初に内定を貰った埼玉大学に就職しました。大学職員になるとは想像もしていませんでしたが、埼玉大学は私にとってまさに人生の転機となった場所で、その環境を支える仕事も面白いかもしれないと思ったことが大きかったかもしれません。また、未来を担う学生を育て、学術研究を通じて社会に貢献するという大学の役割そのものにも純粋に魅力を感じました。早いもので、大学で働き始めて10年が経ち、これまで部局庶務、人事課、学長室、文部科学省への出向、総務課を経て、この4月からは財務課に勤務しています。財務系の部署は今回が初めてで、またゼロから勉強の日々を過ごしています。イメージしていたような学生と接するような部署ではなくバックオフィスばかりではありましたが、その分、大学の経営に近い部署や高等教育行政を担う文部科学省での仕事を通じて、一職員であっても高い視座と広い視野から物事を考えることが大事であると直に学ぶことができました。これからも、間接的ではありますが日々目の前の仕事を積み重ねていくことで、学生の皆さんが学び、先生方が研究する環境を少しずつでもより良くしていけたらと思っています。
2年間に渡る新型コロナの影響で、大学生の醍醐味でもあるサークル活動やアルバイトも制限され、イメージと違う大学生活に悶々としている方も多いと思います。私も大学生の時に同じ状況に置かれたら途方に暮れていたかもしれません。コロナ禍の特殊な状況が続いていますが、こういう時こそ立ち止まらずに様々なことに挑戦したり、自分の人生や将来について考えを深めたり、貴重な大学生時代に色々な気づきを得ていただければと思います。
長くなりましたが、一職員として、学生の皆さんの活躍を心から応援しています。